ジモト発見ライターが駅周辺を街歩き ラビング散歩「秋津&新秋津」編

ラビング散歩
賑わいと静けさが共存する独特なエリア。秋津駅と新秋津駅のあたりを歩くのは意外と楽しい
西武池袋線「秋津駅」とJR武蔵野線「新秋津駅」を結ぶ経路は徒歩で約5分。道筋にはいつも乗り換えの人々が行き交います。このあたりは東京都清瀬市、東村山市、埼玉県所沢市が入り組んでいる場所で、特に秋津駅は3市にまたがっているのが特徴です。よく晴れた12月の午後、秋津駅と新秋津駅を中心に、商店街、住宅街、そして自然が残る河川敷を歩いてみました。
01<西武池袋線 秋津駅南口>
秋津駅は大正6年(1917)に、西武池袋線の前身である武蔵野鉄道の駅として開業しました。当時、この界隈はどこまでも続く雑木林と農地で、のどかな田園風景が広がっていたといいます。現在の秋津駅には南口と北口があり、多くの乗降客は南口を利用します。それはたくさんの人が乗り換える新秋津駅への道筋だからです。 南口を出るとすぐ左手に警官常駐の交番があります。その先には生鮮スーパーがあり、駅近で買い物に便利です。面白いところでは駅の向かいに懐かしい雰囲気の古道具店があります。この古道具店には屋号がなく、何と呼んだらよいのかわかりません。店内にはいろいろな古い物がぎっしりと並べられていました。
02<駅のとなりに交番あり> 03<掘り出し物が見つかりそうな古道具店>
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商店街の賑わい
では西を向いて新秋津駅の方向に歩いてみましょう。ここから賑やかな商店街がはじまります。
まず駅の横にはEmio秋津があり、ここには飲食店、書店、理髪店、スポーツクラブなどが営業しています。なんとスポーツクラブは24時間営業です。
04<多彩なショップが入っているEmio秋津>

05この道沿いにはいろいろなお店が軒を連ねています。

年季の入った酒場があるかと思えば、ファーストフードやラーメン店も。外食しようとしている人にとっては、何を食べるか迷うほど魅力的です。この道が突き当ったら右に折れ、すぐ左に曲がります。交差点の角にある人気のケーキショップが目印です。

06<新秋津駅へ向かう道>
07<横浜家系のラーメン店> 08<人気のケーキショップ>
秋津駅と新秋津駅の往復はお店を眺めながらの徒歩約5分ですから、乗り換えはさほど苦になりません。ただし大雨や猛暑の際はすこし気が重いですね。両駅を地下通路でつなごうという案もあるようですが、地上の商店街にとっては死活問題になりかねず、今のところ現状維持となっているようです。この道は電車を乗りかえる人だけでなく、地元の住民たちも買物に集まってきます。地元の人は軽装や自転車が多いので見分けがつきます。
09<生鮮食品から日用雑貨まで揃う商店街> 10<JR新秋津駅の改札口>
 
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新秋津駅
商店の賑わいを楽しみながら歩いているうちにJR新秋津駅に到着。この駅は昭和48年(1973)開業で、秋津駅に比べるとかなり新しい駅です。そもそもJR武蔵野線(府中本町~新松戸)自体の開通がこの年ですので、駅が新しいのも当然といえば当然です。

新秋津駅前には広々としたロータリーがあり、バスやタクシーの乗り場が整備されています。路線バスは西武バスで、久米川駅行き、所沢駅東口行きがあります。このバスは身近な住民の足として機能しています。他にコミュニティバスとして東村山グリーンバスの東村山駅東口行きがあります。また東京病院などの送迎バスも運用されています。

新秋津駅前に立って感じたのは空の青さと広さが目立つこと。駅の周囲に高層ビルがないため、明るく風通しのよい環境になっています。これから再開発などがあるかもしれませんが、この爽やかさをいつまでも大事にしてほしいと思います。
11<広々とした新秋津駅のロータリー> 12<通勤、通学、外出に便利な路線バス>
 
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知る人ぞ知るパン屋さん
13新秋津駅の改札を出て右へ足を向けると「サントアン」というパン屋さんが見えてきます。ここは店構えも商品も懐かしい感じのパン屋さんです。実はこのパン屋さん、近所に住んでいた相田翔子さん(元ウインク)がアルバイトをしていたことのあるお店です。そして宮﨑駿監督もよくパンを買いに立ち寄られるそうで、知る人ぞ知るお店なのです。新秋津を訪れたときはぜひ調理パンを味わってみてください。郷愁を感じるおいしさが楽しめます。
 
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秋津神社
パン屋さんの前の小さな坂道を降りて行くと、こんもりとした緑が見えてきます。そこにあるのが秋津神社です。詳しい由緒は不明なものの歴史がある神社で、文政3年(1820)の「武蔵名所図会」によると、鎌倉攻めの途上、当地で新田義貞がヤマトタケルに祈願して陣を張ったのがはじまりとされています。本殿には石造舟型の不動尊像が安置されているとのこと。境内にはケヤキやイチョウなどの大木があり、幽玄な雰囲気を醸し出しています。
14<秋津神社> 15
<境内に立つ庚申塔>
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秋津公園
秋津神社から斜面を降りていくと東村山市立秋津公園があります。ここには湧水が流れ込む池があり、木々の緑に癒されます。子どもたちのために遊具が設置されていて、近所のママ友が集まる交流の場にもなっています。

この秋津公園に隣接して線路が走っているのを見つけました。めったに電車は走りませんが、西武池袋線とJR武蔵野線の合流で貨物列車が走ることがあり、そのための引き込み線だということです。見つけたときは旧国鉄の廃線かと思ったのですが、調べてみるとまだまだ現役の線路のようです。神社と公園と線路を眺めながら、不思議な感覚を覚えました。
16<秋津神社から秋津公園へ 右手には線路が> 17<湧水が流れ込む秋津公園の池>
18<西武池袋線とJR武蔵野線が合流する引き込み線> 19<秋津公園の周囲をめぐる散歩道>
 
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住宅街のねこカフェ

秋津公園から秋津神社に戻り、境内の中央あたりから出て、住宅街に歩を進めます。めざすのは秋津駅北口の方向です。このあたりは両駅から数分という恵まれた場所でありながら、実に静かな環境です。途中で踏切のある道路に出ますが、そこにはなんとねこカフェ「ねこ広場」の黄色い建物が。ここはねこの里親募集型カフェで、料金(大人60分1,000円/中学生以下500円)を払って入館する仕組みになっています。ねこと遊びたい、ねこを飼いたいと思っている優しい人々が訪れるようです。余談ですが、この黄色い家、以前は将棋の清水市代さんの実家でした。確か将棋道場も運営されていたと記憶しています。いつしか引越しされて、残った家がねこカフェになりました。

20<黄色い家が、ねこカフェ ねこ広場>
 
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秋津駅北口へ
ねこカフェの前から、線路に沿って秋津駅方向へ進みます。これは秋津駅北口へ向かう歩行者の近道なのですが、お墓の横を歩くので、夜はスリリングかもしれません。そしてお墓の向こうに何やら塔のようなものが見えます。通りかかった子どもが「スカイツリーが見える!」と言いながら走って行きましたが、それはないでしょう。興味津々で塔の下まで行ってみると、消防水利施設の塔でした。いわゆる給水塔で、約10トンの水を貯留できるとのこと。東京都住宅局が管理しているそうです。給水施設の隣には「秋津町五丁目アパート公園」があり、近所の子どもたちが元気に遊んでいました。
21<謎の塔の正体は?> 22<秋津町五丁目アパート公園>
さらに歩を進め、もうすぐ秋津駅北口というところでクリニックを発見。地域密着のホームドクターといったところでしょうか、こういう身近な医療機関の重要さを感じる今日この頃です。
23<かわいいデザインの診療所> 
24<秋津駅北口> 
秋津駅北口には駅前広場やロータリーがありません。コミュニティバスが停車するスペースが確保されている程度で、すこしせまい印象です。しかし北口はもともと人や車の通行が少なく、今のところ不便を感じることはありません。駅前には清瀬市が運行するコミュニティバス「きよバス」が停車します。清瀬駅南口行き(緑陰通り・志木街道経由)、清瀬駅北口行き(野塩団地経由)の2系統があります。利用する時は時刻表をよく確認しましょう。

25秋津駅北口に設置された駐輪場は24時間ごと70円というリーズナブルな料金が魅力。そしてスイカやパスモが使える利便性にも注目です。通勤の行き帰りに快適に使えそうです。

駅前の自動車用コインパーキングは24時間900円。パークアンドライド(西武池袋線を使って降車し、パスモかスイカで精算した場合)だと24時間700円になります。

26<秋津駅北口前の駐輪場>
 

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ギャラリーカフェのあるまち

秋津駅北口を通り過ぎ、線路沿いに池袋方面へ歩いてみます。踏切の際にカフェギャラリーがあり、アーティスティックな雰囲気を感じさせます。ここでは展示会や演奏会などが開かれるそうです。こういうお店があると、地域が文化的な印象になりますね。
そしてカフェギャラリーの向かいには病院があり、安心して暮らせるイメージがあります。
27<おしゃれなギャラリー喫茶> 28<地域に根ざした医療機関>
29踏切を背にして歩いて行くと、しらうめ冒険ランドという幼児教育施設が見えてきます。この周辺は野塩児童館をはじめ幼稚園、保育園が集まっていて、子どもたちの元気な姿が見られます。
そして、スーパーマーケット「いなげや」が登場。秋津駅周辺は個人店やチェーン店の集積で賑わっていましたが、ここは地域の衣食住を支えるワンストップなスーパーマーケットです。とても明るい店内でした。
30<暮らしに身近なスーパーマーケット>
31そのまま柳瀬川通りという道路をしばらく道なりに歩いて行くと、明治薬科大学のキャンパスが広がります。自然にかこまれたモダンな校舎が特徴です。
 
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空堀側の自然
更に柳瀬川通りを歩いて行くと、空堀川に架かる梅坂橋に出ます。この空堀川、もう少し下流で柳瀬川と合流します。自然を求めてそちらへ歩いてもいいのですが、きょうは少し上流で橋を渡って、圓福寺というお寺を訪ねてみることにします。
32<空堀川の両岸には歩道が整備されている>
 
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圓福寺

空堀川に掛かる薬師橋を渡ると、目の前が圓福寺。正式には曹洞宗大醫山圓福寺と称します。本尊は釈迦牟尼仏(シャカムニブツ)で、寛永年間に陽岳春和大和尚が創建したといわれています。圓福寺は山門、本堂、薬師堂、双樹堂、三重塔、鐘楼堂から成り立ちます。

むかし目が見えない琵琶法師が薬師堂を訪れ、目が見えるようになるよう願掛けをしたといいます。祈願と修行に打ち込み、満願の日に目を開けると、薬師如来の姿が見え、不思議なことに視力が戻っていました。琵琶法師は喜びのあまり大事な琵琶を近くの松の木にかけたまま旅に出てしまったそうです。その松の木はすでにありませんが、薬師如来への信仰は今に伝えられています。

33<圓福寺には薬師如来が祀られている>
 
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閑静な住宅街
圓福寺を後にして薬師橋を渡り、そのまままっすぐ静かな住宅街を歩いてみました。単なる住宅街なのですが、静かで趣があります。途中で見つけた鋳物製の丸ポストが街並みに似合っていて印象的でした。柳瀬川通りと並行している道で秋津駅方面へ歩き、踏切を渡って秋津駅南口に帰還しました。時間があれば圓福寺の後に柳瀬川河川広場などに行きたかったのですが、体力を温存することにしました。そして秋津駅近くのコーヒーショップで休憩して帰路につきました。
34<住宅街で見つけた鋳物の丸ポスト>
 
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秋津駅と新秋津駅周辺のまとめ
秋津駅&新秋津駅の界隈を歩いて感じたのは、やはり昔ながらの落ち着いた雰囲気でした。個人商店の親しみやすさ、神社仏閣の自然と静寂、住宅街や公園の落ち着き、その一方で暮らしに必要なスーパーマーケットやチェーン店が揃っている利便性。それらの相乗効果でリラックスできる東京郊外の街並みがありました。
取材・文・写真/イワタハルユキ
※この記事の内容は令和2(2020)年12月14日現在のものです

 


A:秋津駅南口 B:ロートンヌ秋津本店 C:パン屋サントアン D:秋津神社 
E:秋津公園 F:秋津町5丁目アパート公園 G: 山本病院
H:いなげや I:明治薬科大学 J:圓福寺 

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