ジモト発見ライターが駅周辺を街歩き ラビング散歩「下山口」駅 編

ラビング散歩 長い歴史のある山口地区で「里の四季」を感じつつ、狭山丘陵の自然を満喫

所沢市山口地区は狭山丘陵の豊かな自然にかこまれた静かな住宅街。最寄り駅は西武狭山線の「下山口」駅です。

西武狭山線は西武池袋線「西所沢」駅と「西武球場前」駅を結ぶ路線で、途中駅は「下山口」駅のみ。この路線、メットライフドーム(西武ドーム)で試合があるときは観戦に訪れる野球ファンで賑わいますが、普段は静かで落ち着いた雰囲気です。
今回は一般にあまり知られていない「下山口」駅の周辺を歩いてみました。

下山口駅の改札は1か所で住宅に埋もれるようにある<下山口駅の改札は1か所で住宅に埋もれるようにある> 

 

ラビング散歩 駅と踏切と商店街

下山口駅は小さな駅です。そのせいか清掃がいつも行き届き、きれいな印象があります。この駅を利用するのは住民と狭山丘陵を歩きに訪れる観光客。大規模なターミナル駅に較べると、駅と乗降客との距離感が近いのかもしれません。それはとても良いことのように思えます。

改札口を出て、道路に出ると、踏切があります。
周囲を見回すと菓子店、居酒屋、美容院、カフェなどが見えます。駅からすぐに生活感のある商店街に踏み込んでいく感じ。小さな駅ならではのほのぼのとした雰囲気です。

単線の西武狭山線<単線の西武狭山線>

駅を出て右に進むとすぐに県道55号線に出ます。
この道路は西所沢から狭山湖方面に向かう当地のメインストリート。まず「下山口駅入口」という交差点から西所沢方面に歩いてみます。

このあたりの印象は「昔からある商店街」というイメージ。ところどころに民家をはさみながら、昔ながらの個人商店が頑張っています。おいしい焼きたてパンで有名な「パン工房ぬっく」をはじめ、飲食店、自転車店、整骨院、学習塾、弁当惣菜店、クリーニング店、美容院、菓子店などが次々と現れます。地域密着の飯能信用金庫山口支店もあります。

県道55号線を西所沢方面へ歩く<県道55号線を西所沢方面へ歩く>

飯能信用金庫山口支店<飯能信用金庫山口支店>

県道55号線沿いにはいろいろなお店がある<県道55号線沿いにはいろいろなお店がある>

めずらしいクリーニングとコインランドリーの併設店舗<めずらしいクリーニングとコインランドリーの併設店舗>

しばらく歩くと、行く手に高架橋が見えてきました。県道55号線が西武狭山線をくぐる立体交差です。そこを越えると山口地区というよりは西所沢のエリアになります。ということで菓子チェーン店のシャトレーゼの前でUターン。いま来た道を戻ることにします。

駅方面に戻る途中で気がついたのは、お寺の存在でした。
まずは佛蔵院。真言宗豊山派の寺院で辰爾山勝楽寺と号します。創建は霊亀2年(716)と非常に古く、延久3年(1071)に中興して栄えた後、被災で苦労したとのこと。そして昭和初期に山口貯水池(狭山湖)が建造された際、湖に沈む勝楽寺村から当地へ移転してきたそうです。

百番供養塔<百番供養塔> ほうきを持ったお地蔵さん<ほうきを持ったお地蔵さん>

佛蔵院の本堂<佛蔵院の本堂>

下山口駅周辺には佛蔵院だけでなく、来迎禅寺や瑞幡山勝光禅寺もあり、関連資料を読むとこのあたりが歴史ある霊場として栄えていた様子が分かります。県道55号線は巡礼の道筋でもあったのでしょう。下山口にこうした歴史的背景があると思うと、景色がまた違って見えてきます。

勝光禅寺の山門<勝光禅寺の山門>

勝光禅寺境内の観世音菩薩像<勝光禅寺境内の観世音菩薩像> 

 さて、お寺で心が洗われた後は県道55号線をひたすら西へ歩き、山口城跡をめざします。
このあたりでも個性的なお店が何軒か目に入り、思わず立ち止まって覗き込んでしまいました。写真は塗装のことなら何でも気軽に頼めそうなお店です。

塗装専門店<塗装専門店>

引き続き、県道55号線沿いをご紹介。外科、内科、胃腸科の診察が受けられる医院があり、かかりつけ医に最適そうです。住民にとって近所にお医者さんがいることは頼もしいことです。

身近な医療機関もあって安心<身近な医療機関もあって安心>

下山口駅周辺の金融機関としては、先にご紹介した飯能信用金庫、JAバンク、そして武蔵野銀行下山口支店があります。個人店や中小企業にとって地元に溶け込んだ金融機関は必要不可欠な存在。この3店舗は地域密着を掲げて地元に貢献しています。

JAバンク山口支店<JAバンク山口支店>

武蔵野銀行下山口支店<武蔵野銀行下山口支店>

山口城跡の手前には、スーパーマーケット、ドラッグストア、ファッション市場の3店が並んでいます。日常生活で必要なものは、ここでほとんど揃うと言ってもよいでしょう。それぞれ駐車場も完備されています。

日々の買物に便利なスーパーマーケット<日々の買物に便利なスーパーマーケット>

ドラッグストアとファッション市場が並ぶ<ドラッグストアとファッション市場が並ぶ>

 

 山口城跡を眺めて武士の時代に思いを馳せる

いよいよ到着。ファッション市場サンキのすぐ隣が山口城跡です。
周囲を見回すとマクドナルド、セブンイレブン、バーミヤンがあり、商業施設に遺跡が埋もれている印象。

この山口城は平安時代末期に武蔵七党という武士団の村山党から分かれた山口氏の居宅跡です。
当時は東西200メートル×南北200メートルの規模があり、土塁と堀で守りを固めていたとのこと。その敷地は近代化とともに道路、鉄道、河川、商店などが整備され、現在の姿になりました。

盛り上がった土塁を眺めながら、こういう身近なところに歴史を感じるのも楽しいことだと思いました。
願わくは「もう少し遺跡を大事にしてほしかった」というところでしょうか。
山口城址を示す石碑<山口城址を示す石碑>

土塁の名残が見られる山口城跡<土塁の名残が見られる山口城跡>

 

 下山口駅の南側は自然の宝庫

しばらく山口城跡を見てから来た道を戻り、もう一度、下山口駅へ。今度は反対側にある小さな踏切を渡ります。すると、すぐにそこに見慣れた看板が・・・そう、株式会社山口企画設計山口支社です。不動産の賃貸、売買、建築、リフォームなど何でも相談できる地域密着のお店。山口支社は所沢市山口地区を中心に、埼玉県西部を広く担当しています。

不動産と建築の情報が豊富に揃う山口企画設計<不動産と建築の情報が豊富に揃う山口企画設計>

さて、地図を眺めると、駅の南側は自然が多いエリアのようです。静かな住宅街を黙々と歩き、自然の宝庫に向かうことにしました。めざすは荒幡富士!

ところどころに道標が立っていて安心して歩ける<ところどころに道標が立っていて安心して歩ける>

途上では田園風景が広がる<途上では田園風景が広がる>

緑の中をひたすら歩く<緑の中をひたすら歩く>

丘陵地帯の森に入っても、道はほとんど舗装されているので、誰でも歩きやすいルートです。森の緑や田園風景を楽しみながら歩き、「埼玉県狭山丘陵いきものふれあいの里センター」(通称:いきふれ)に到着しました。

いきふれは狭山丘陵で暮らす「いきもの」をテーマにした施設。展示室、観察バルコニー、講義室、炭焼き窯などが整備されています。狭山丘陵には雑木林、谷戸、湿地などがあり、植物約1000種、昆虫約1000種、鳥類約200種が生息するといわれています。
これらの自然とふれあい、観察しながらリフレッシュできる環境は、住民にとっても、訪れる観光客にとっても、まさに自然の宝庫と呼ぶにふさわしいものです。

狭山丘陵観察の拠点、いきふれ<狭山丘陵観察の拠点、いきふれ>

 いきふれから緑の中をすこし歩くと荒幡富士や市民の森があります。お天気も良かったので今回は荒幡富士に登ってみました。

荒幡富士は人工の富士山で標高119メートル。村人たちが15年の歳月を費やして明治32年(1899)に完成させたとのこと。関東大震災や第二次世界大戦の混乱で荒れ果てた時期もあったようですが、地元住民の努力で現在も原形が維持されています。
頂上からは本物の富士山をはじめ、奥多摩の山々、所沢市街などが見渡せます。

荒幡富士<荒幡富士>

急な石段を登る<急な石段を登る>

頂上から見える市民の森と所沢市街<頂上から見える市民の森と所沢市街>

荒幡富士周辺の農地には四季折々の花が咲く<荒幡富士周辺の農地には四季折々の花が咲く>

 

 下山口駅周辺で見えたのは、静かな暮らしと豊かな自然

荒幡富士を登り降りした頃から、脚に限界を感じはじめたジモト発見ライター。それでも爽快に下山口駅まで戻ってきました。このあたりを散策してわかったことは、山口地区が意外にも長い歴史を持つ村落だったということ。平安時代に山口氏一族が居城を持っていたことを山口城跡の掲示板のおかげで知ることができました。

現在の山口地区は狭山丘陵にかこまれた静かな住宅地という風情で、日々おだやかに暮らせそうな地域になっています。何より素晴らしいのは荒幡や椿峰などの豊かな自然環境が間近にあること。自然散策やウォーキングで四季を感じながら過ごすことができそうです。

街があって、自然がある。下山口駅周辺は深呼吸できるリラックスタウンだと実感しました。

下山口駅の目立たない駅舎がかわいらしい<下山口駅の目立たない駅舎がかわいらしい>

取材・文・写真/イワタハルユキ
※記事内容は2020年3月現在のものです
 

 

■A:下山口駅 ■B:飯能信用金庫山口支店 ■C:佛蔵院 ■D:勝光禅寺 ■E:武蔵野銀行 下山口支店 ■F:ベルク 山口店 ■G:山口城跡 ■H:山口企画設計山口支社 ■I: 埼玉県狭山丘陵いきものふれあいの里センター ■J:荒幡富士

(取材/ ジモト発見ライター イワタハルユキ)
※記事内容は2020年3月現在のものです

 

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