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日傘の発想を建築に活かす!暑さ対策としての庇・オーニングのすすめ

2025/08/09(土) 日々のこと建築広報課

命を守る日陰──日傘から考える、建物の暑さ対策

日傘と酷暑こんにちは。
連日の酷暑。もはや「暑い」では済まされない、命に関わるレベルの気温が続いています。そんな中、街を歩いていると日傘を差す人の姿が目につきます。女性だけでなく、最近では男性の姿もちらほら。実は私自身も、昨年から日傘を使い始めました。最初は少し照れくささもありましたが、使ってみるとその効果に驚かされました。傘で日陰をつくるだけで、体感温度がまるで違います。直射日光を遮ることで、汗の出方も、歩いたときの疲労感も大きく軽減されたと実感しました。これは単なる気分の問題ではなく、実際に身体が受ける熱負荷が減っている証拠。
日傘はファッションアイテムではなく、「意図的に日陰をつくる」行為。この言い回しはかなり大げさな表現かもしれませんが、自分の周囲の温度を下げる、いわばパーソナルな気候調整装置と言ってもいいくらいです(笑)
では、この「日陰をつくる」という発想は、個人の工夫にとどまらず、建物の設計にも応用できるとすればどういうことになるでしょうか?


窓のジレンマ──採光と日射のせめぎ合い

建物にとって窓は、自然光を取り入れ、室内を明るく保つために欠かせない存在です。しかしその一方で、夏場には窓から入る日射が大きなデメリットになります。太陽の熱が室内に侵入し、室温を上昇させてしまうのです。
建築基準法でも「採光」は重要な要件として定められており、居室には一定の明るさを確保することが求められています。また、「通風」も同様に重視されており、建物内に自然の風を通す設計が推奨されています。つまり、「明るさ」と「風通し」の両立が建築の基本的な考え方といえますが、これが時として仇となることもあります。もちろん近年では、サッシの断熱性能も大きく向上しており、ガラス自体にも遮熱性能の高い製品が使われるようになっています。たとえば、Low-E複層ガラスは日射熱の侵入を抑えながら、室内の明るさを確保できるため、住宅でも一般的になりつつあります。
それでもなお、夏の日差しの影響は無視できません。どれほど性能の高い窓であっても、直射日光を長時間受け続ければ、室温は上昇してしまいます。だからこそ、パッシブな工夫──外部から日射を遮る「日陰の設計」との組み合わせが重要になるのです。
冬場にはありがたい太陽光が、夏場には厄介な熱源になる──このジレンマに、私たちはどう向き合っていくべきなのでしょうか。


建築的な「日傘」──オーニングと軒の出

ここで登場するのが、オーニング軒の出といった建築的な「日傘」です。これらは建物に日陰をつくる装置。夏の高い太陽高度では、庇が直射日光を遮り、室内温度の上昇を防ぎます。一方、冬の低い太陽高度では、庇の影をすり抜けて日射が室内に届く──つまり、季節に応じた「日射コントロール」が可能になるのです。特にオーニングは、可動式や収納式のタイプであれば、必要なときだけ出せて、普段は視界や動線の邪魔になりません。電動式であれば、室内からボタンひとつで操作でき、利便性と快適性を両立できます。
以前は、シンプルでモダンな外観を重視して軒を出さない設計が好まれる傾向もありました。しかし、酷暑が常態化する今、軒の持つメリット──日射遮蔽、雨除け、外壁の保護など──が再評価されつつあります。軒の出は日差しだけでなく、雨にも有効です。窓や外壁に直接雨が当たるのを防ぎ、建物の劣化を抑える役割を果たします。特に日本のように梅雨や台風のある気候では、軒があることで雨の吹き込みを軽減でき、窓を開けたままでもある程度の通風を確保できる場面もあります。
「デザイン」と「機能」のバランスをどう取るか──それは、これからの建築に問われる選択といえるかもしれませんよね。

オーニング<LIXILオーニング 彩風> パッシブデザイン設計図<日射を考慮した設計の住宅例>

 


日傘と建築の共通点──「自分で影をつくる」という知性

日傘も庇も、「受動的に暑さに耐える」のではなく、「能動的に環境を調整する」工夫のひとつ。暑さに対して、我慢ではなく設計で応える。これは、身体的にも精神的にも成熟した暑さとの付き合い方ではないでしょうか。日傘を差すという行為は、個人の選択でありながら、環境との関係性を再設計する知的なふるまいです。そして建物の庇やオーニングもまた、空間における「日陰のデザイン」として、暮らしの質を左右する重要な要素かもしれません。


おわりに──あなたの住まいには、どんな日傘がある?

日傘の女性日傘を差す人が増える社会。庇を設ける建物が増える都市。
どちらも、「日陰をつくる」という行為が、命を守り、快適さを生み出していると言えます。日傘は、誰かに与えられるものではなく、自分で差すもの。建物の庇もまた、設計によって能動的につくられる日陰です。暑さに対して、我慢ではなく工夫で応える──それは、成熟した環境との付き合い方かもしれません。
さて、あなたの住まいには、どんな日傘があるでしょうか?そして、窓のまわりには、どんな影が設計されているでしょうか?

最後はちょっと哲学的な雰囲気になってしまったかもしれませんが、また何かあれば書いてみたいと思います。

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