災害に強い家づくりとは?在宅避難時代に求められる住まいの備え
こんにちは。 日本は災害が多い国として知られており、その影響は家づくりにも大きく表れています。とくに耐震性能は重要視されていますが、災害への備えは建物の性能だけで十分なのでしょうか?その点が気になり、この記事で考えてみたいと思います。
はじめに:防災を前提にした家づくりの重要性
ここ数年、能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報の発表など、大規模災害のリスクがより現実的に感じられるようになりました。地震・台風・豪雨といった自然災害が多発する日本において、「災害に強い家づくり」はすべての住宅検討者にとって欠かせない視点ですよね。 ここでは、在宅避難という考え方を中心に、災害時でも安心して暮らせる住宅の条件や備えについて解説します。
避難所だけが避難ではない:「在宅避難」の現実
大規模災害発生時、「避難=避難所へ行く」と考えがちですが、実際には避難所の収容人数には限りがあり、混雑や衛生環境の問題から避難を断念する人も少なくありません。 特に、高齢者や要介護者、ペットがいる家庭では避難所生活そのものが困難なケースも多く、「自宅で避難生活を送る=在宅避難」という選択肢が注目されています。
災害に強い家とは?5つの備えのポイント
1. 耐震性能:命を守る構造は最優先
大地震が発生した際、住宅そのものが倒壊してしまっては、備蓄も避難も意味をなしません。まず最優先されるべきは、「建物の倒壊を防ぐ」ことです。
- 耐震等級3(最高等級)の建物は、消防署や警察署などの防災拠点と同レベルの耐震性を持っています。
- 新築住宅は建築基準法に基づき、震度6強〜7程度の大地震でも「倒壊・崩壊しないこと」を目的とした最低限の安全性を確保しています。ただし、居住継続や家具転倒防止など、より高い安心を目指すには追加の備えが有効です。
- 木造住宅でも、設計段階で壁量のバランスや接合部の強化を適切に計画することで、高い耐震性を実現することが可能です。ただし、実際の耐震性能は、設計だけでなく施工精度や地盤の強度、基礎構造などにも大きく左右されます。信頼できる建築士や施工会社と連携し、建物全体での安全性を確保することが重要です。
POINT:築年数が古い住宅に住んでいる方は、耐震診断や耐震補強工事の検討が有効です。
2. 水・食料の備蓄スペース:3日〜1週間分を目安に
「備蓄している」と言っても、収納のどこにどれくらい何があるか、正確に把握できていないケースが多くあります。
- 災害時に必要な水は1人1日3リットルが目安。家族4人なら3日間で36リットル。
- 食料も、加熱せずに食べられるもの、保存が効くものを中心に、普段使いと併用できるもの(ローリングストック)が有効です。
- 備蓄の保管場所は、倒壊しづらい1階収納部や床下収納、玄関収納などが現実的です。
POINT:冷凍食品や缶詰、パックご飯などを普段からストックし、賞味期限にあわせて消費・補充する習慣をつけましょう。
3. エネルギーの自立性:ライフラインが止まっても暮らせる工夫
停電やガス停止が起きた場合、「明かりがつかない」「冷蔵庫が止まる」「スマホが充電できない」など、暮らしに大きな支障が出ます。
- ポータブル電源やソーラーチャージャーは、スマホやLEDランタンの電源確保に有効です。
- 住宅全体で備えるなら、太陽光発電+蓄電池の導入で、非常時にも冷蔵庫・照明などを稼働可能に。
- カセットコンロやガスボンベがあれば、電気が使えなくても調理やお湯づくりができます。
POINT:「停電時にどこで何を使うか」までシミュレーションして備えるのが安心につながります。
4. 暑さ・寒さ対策(断熱・通風):住まいの温熱性能が命を守る
停電でエアコンやストーブが使えないと、体温調整が難しくなります。特に夏の熱中症、冬の低体温症は高齢者や乳幼児にとって命に関わるリスクです。
- 断熱性の高い住まいは、外気温の影響を受けにくく、室温を保ちやすいのが特長です。特に、猛暑や寒波の際には、熱中症や低体温症といったリスクを軽減する効果が期待されます。ただし、気候や住まい方によって効果の程度は異なるため、地域特性や家族構成を考慮した対策が望まれます。
- 内窓の設置や断熱材の追加、遮熱カーテンの利用など、後付けでできる対策も多数あります。
- 換気経路の確保、風通しの良い間取り設計も有効です。
POINT:「断熱」は快適性だけでなく、防災の観点でも重要な住宅性能のひとつです。
5. メンタルの安定につながる空間:避難生活を日常の延長として考える
災害時は肉体的な疲れだけでなく、精神的ストレスも大きくなります。住み慣れた家で過ごす「在宅避難」なら、心の安定を保ちやすくなります。
- お子様が安心できるおもちゃやお菓子、絵本などを非常用袋に入れておく。
- 好きなレトルト食品、飲み慣れたお茶やコーヒーなど「日常の味」を用意しておく。
- 家族と日頃から避難計画や備蓄場所を共有し、話題にしておくことで、いざという時の安心感が高まります。
POINT:災害時の「生活の質(QOL)」を意識した備えが、ストレス軽減に効果的です。
調査データから見る“備え”の現状
東京ガス 都市生活研究所が2025年2月に発表したレポートによれば、首都圏在住の30〜60代既婚男女のうち、「防災に関心がある」と回答したのは約半数。しかし「自宅の備えが十分にできている」と答えた人は2割にとどまりました。 この傾向は公的調査からも裏付けられています。たとえば、内閣府「防災に関する世論調査(令和4年度)」では、「日頃からの備えができている」と答えた人はわずか約3割にとどまり、防災意識と備えの実行にギャップがあることが示されています。 さらに、総務省消防庁の「防災・減災の取り組みに関する世論調査(2023年度)」によると、「非常持ち出し袋を備えている家庭」は約35%にすぎず、家庭における防災準備が依然として十分とは言えない現状が浮き彫りとなっています。
まとめ:安心して暮らせる家の条件とは
家は「住むため」の場所であると同時に、「守るため」の場所でもあります。 災害時に家族の安全と日常の暮らしを守ることが、現代の住宅に求められる重要な価値となっています。日常の快適さと、もしもの時の安心。この両面を備えた住まいづくりが、今後ますます必要とされるでしょう。
参考出典 「都市生活レポート 在宅避難を“自分ごと”に」東京ガス株式会社 都市生活研究所(2025年2月発行) 内閣府「防災に関する世論調査(令和4年度)」 総務省消防庁「防災・減災の取り組みに関する世論調査(2023年度)」
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