深井醤油株式会社

安政3年創業の老舗が挑戦!醤油から広がる所沢の新しい波

所沢は古くから鎌倉道と江戸道が交差する交通の要衝で、宿場町としてにぎわい、市が立つなど商・工・農業が盛んな土地柄でした。その所沢で安政3年(1856)に創業し、歴史と伝統を今に伝えている老舗が深井醤油株式会社です。

160年余の歴史を持つ深井醤油の現社長は五代目の深井保壽(ふかい やすとし)さん。今回は、そのご子息で取締役・総合企画部長の深井隆正さんにお話を伺いました。深井醤油は所沢を代表する老舗で、今さら「気になるお店」でもないのですが、近頃はいくつかの新しい取り組みをはじめていて、その元気な様子に注目しました。

深井醤油本店
<深井醤油本店>

本店には豊富な商品が並ぶ
<本店には豊富な商品が並ぶ>
取締役の深井隆正さん
<取締役の深井隆正さん>

 

160年余の歴史のなかのエピソード

深井醤油の初代は、その名を保平(やすへい)といい、商品に「山」の図形と「保」の文字を組み合わせた印を冠しました。ここから「ヤマホ醤油」と呼ばれるようになったそうです。今でもヤマホのマークは深井醤油のシンボルとして使われ、所沢はもちろんのこと埼玉を代表するブランドとして親しまれています。

その歴史を振り返ると、深井醤油にとって大きなインパクトとなった出来事があります。それは明治27年(1894)に所沢焼き団子組合が定めた申し合わせ事項。そこでは所沢焼き団子として、串の長さや団子の玉の大きさなど8項目の決まりが定められました。そのひとつに「醤油は所沢産のヤマホに限る」という項目が採用されたのです。深井醤油の歴史の上で、たいへん名誉なことであり、地元の雄としてその名はさらに高まることになりました。

「申し合わせ事項が作られたのは約120年前ですから、ヤマホ醤油がその頃すでにお団子などに使われて地域になじんでいたことがわかります。ありがたいことだと思います」と隆正さん。所沢ブランドとして老舗の歴史を感じます。

さて、長い歴史があると、ヒヤリとするエピソードも残されています。所沢は日本の航空発祥の地であり、現在の所沢航空記念公園のあたりには、かつて飛行場がありました。大正11年8月2日午前8時、陸軍の練習機が深井醤油の蔵に墜落するという事故があったといいます。幸い乗組員は軽傷で済み、後日お店を訪れたとのこと。こうした出来事も所沢の老舗ならではの話ですね。

 

新しい挑戦「ところざわ焼きそば醤油」

そんな長い歴史を持つ深井醤油ですが、伝統を守るだけではなく、新しい取り組みにも熱心です。その代表的なものが平成29年(2017)に発売された「ところざわ焼きそば醤油」。これは新しい所沢名物になりつつある「ところざわ醤油焼きそば」に使われているもので、同じく所沢で麺をつくっている株式会社見澤食品とのコラボレーションから生まれたアイテムです。

深井醤油の「ところざわ焼きそば醤油」は、これを使うだけで焼きそばの味つけが出来てしまうという便利な商品。1本378円(税込)で買える手軽さも、庶民の食べ物焼きそばにぴったりです。

ところざわ焼きそば醤油
<ところざわ焼きそば醤油> 

「ところざわ醤油焼きそば」は、所沢の新しい特産品を生み出そうと熱心に取り組んでいる見澤食品から声が掛かり、それに深井醤油が呼応する形で実現したもの。

「もともと所沢はお団子のまちで、うどんのまちでもありました。ここで麺と醤油を使った新しい波を起こすのは、エキサイティングなことだと思いました」と隆正さん。

「ところざわ醤油焼きそば」は元町コミュニティ広場を中心に開催された「三八の市」のブースで販売を開始。当日は長い行列ができるほど人気を博しました。 

この「ところざわ醤油焼きそば」について、隆正さんに説明していただきました。
「ところざわ醤油焼きそばと名乗るためには3つの条件があります。1つめは所沢市内でつくられた麺を使うこと。2つめは所沢市内でつくられた醤油を使うこと。3つめは所沢市内で収穫された野菜を一品以上使うこと。ルールはこれだけです。こまかいルールでがんじがらめにしないほうが、それぞれのお店で個性的な商品を考えてお客様に提供することができると考えました」

焼きそばは老若男女の誰にでも好かれ、どこでも手軽に食べられる食品。火を入れて香ばしい醤油の香りを楽しみながら、ご当地の野菜を味わえれば言うことなしです。

隆正さんは言います。
「実は所沢ではいろいろな野菜が獲れるんですね。サトイモ、ホウレンソウ、ニンジンなどはよく知られていますが、ズッキーニ、パプリカ、パクチーなどの珍しい野菜も収穫されています。飲食店のみなさんにはこうした所沢の野菜を使っていただき、『ところざわ醤油焼きそば』を提供するお店は着実に増えています。うちは醤油屋なので、醤油だけでは料理になりません。いろいろなジャンルやメニューがあることで、醤油も生きてきます。まち全体で相乗効果が上がってくるといいなと思っています」 

 

「ミニ甚吉袋」でおしゃれなノベルティ

また、新しい試みのひとつに「ミニ甚吉袋」の提供があります。甚吉袋とはかつて酒屋から酒を持ち帰るときに使っていた袋のこと。今でいうエコバッグのようなもので、ざっくりとした木綿の感触が素朴な袋です。今回の試みはその甚吉袋を手軽な小瓶サイズにアレンジしたもの。店頭に飾ってある深井醤油の甚吉袋を見るとミニサイズでも確かな存在感があります。

「最近は甚吉袋を使ったノベルティにも力を入れています。地元所沢のオリジナル感を訴えながら、特別感も出せますし、一般の方だけでなく企業さまにも利用価値が広がると思います。季節の贈り物をはじめ、イベントのお土産など、いろいろな活用の道が考えられます」と隆正さん。ブランドイメージの向上にも寄与しているようです。

甚吉袋でおしゃれな贈り物
<甚吉袋でおしゃれな贈り物>

 

味見をしてから、ご家庭用やご贈答用に

醤油やだし醤油を初めて買うときや贈り物にするとき、味見をしたいと思う方も多いと思います。そうした要望に応えて、深井醤油本店には味見コーナーが設置されています。また、商品を購入するお客様目線に立って「味くらべセット」も用意し、はじめの一歩を踏み出しやすくしているとのこと。いろいろな商品の詰め合わせについても気軽に相談できます。

本店では醤油やだし醤油の味見ができる
<本店では醤油やだし醤油の味見ができる>
贈り物には各種詰め合わせが人気
<贈り物には各種詰め合わせが人気>

 

西武所沢店1階のショップで買いやすく

深井醤油の本店は所沢市有楽町にありますが、所沢駅前には西武所沢店があります。以前は地下だったお店が、平成29年のリニューアルで1階にのれんを掲げることができました。以前より格段に目立つ場所で、落ち着いて対面販売ができる明るいスペースです。

西武所沢店1階の深井醤油
<西武所沢店1階の深井醤油>
工夫を凝らした陳列棚
<工夫を凝らした陳列棚>

この西武所沢店のショップは、隆正さんが中心となり、西武のスタッフと何度もやりとりしながら、デザインしたとのこと。

「こうしたショップのデザインは初めての経験で、手描きで構想を形にしていきました。お店の背景の什器は、陳列した商品がそのままディスプレイになるようなイメージにしています。商品が飾りになる感じですね。店舗内の間取りも動線を考えて工夫しました」

 

今後の抱負は「文化として楽しめる深井醤油を」

隆正さんにこれからの抱負と読者のみなさんへのメッセージを伺いました。

「今後の抱負としては、所沢の野菜で漬物をつくりたいと思っています。それ以外にも、焼きそばに限らず醤油を生かした商品をいろいろつくりたいですね。すでにハンバーグやロールケーキに醤油を使ってくれているお店もあり、可能性は無限にあると思っています」

「それから、深井醤油もいずれは製造現場をみなさんにお見せできるようになれれば、と思っています。見学路などがあれば地元の観光振興にもなりますし、食品製造を文化の一環として楽しめるようになると思っています」

「みなさまへのメッセージとしては、所沢にはいろいろなお店がありますから、身近なものを身近なところで食べて、楽しんでいただきたいと思います。どこにでもある全国区のものではなく、所沢らしさを見つけて味わっていただきたいですね。ここにしかない地元のものを楽しめるように深井醤油も努めますので、所沢においでになったときはぜひご来店ください!」

 

歴史を感じさせる蔵
<歴史を感じさせる蔵> 

 

お店のデータ

深井醤油株式会社(ヤマホ醤油) 

<本店>
所在地/〒359-1117 所沢市有楽町7-5
TEL/0120-46-2015
営業時間/9:00~17:30
定休日/年中無休
駐車場/あり(無料)

Homepage http://www.yamaho.co.jp 
Facebook https://www.facebook.com/yamaho1856/

<西武所沢店>
所在地/〒359-1123 所沢市日吉町12-1 西武所沢店1F
TEL/04-2922-5550
営業時間/10:00~20:00
定休日/年中無休
駐車場/あり(お買い上げ金額によりサービスあり)

 

 

トピックス|すべての記事

ページトップへ